バッハのシャコンヌ にみる信仰告白             ( 無伴奏ヴァイオリンの為のパルティータ第2番 )

エッセイ

シャコンヌは全三曲からなる無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータのなかの第二番ニ短調の終曲として作曲されたもので、「シャコンヌ」単体の演奏時間は約14分ほどです。1707年、22歳になったバッハは教会音楽家として勤めながら、作った曲を売って収入を得るようになっていました。この頃結婚したのが最初の妻マリアである。7人の子供が生まれたが、当時の公衆衛生のレベルでは乳幼児の死亡率が高く、7人のうち成長できたのは4人だけであった。1720年、バッハが雇い主の旅行に随伴して留守の間にマリアは急病で死去した。バッハが家に帰った時にはすでに埋葬を終えており、泣いて父を出迎える子供たちの姿があったという。この時期に書かれた「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調・終曲シャコンヌ」は、バッハの信仰告白と私は思う。「こんなバッシングを受けてもなお、神様にお仕えしなければいかないのか?」冒頭の物憂げなテーマ。バッハの心情を赤裸々に示した。状況を舞台劇様に描いてみた。
「父なる神よ、マリヤはどうして亡くなる運命だったのでしょうか。私は、まがりなりにもあなた様にお仕えする身でございます。その私にこれはあまりに非情すぎるのではありませんか。」・・・これが冒頭の告白。静かで、しかし心底からの呻きの告白。
神様は、「マリヤの葬儀の間、あなたがマリヤの死も知らずにいたことに、私達は皆、涙を流しました。この現実には、確かに私の計画がありました。しかし、このことについては貴方に説明しても理解は難しい。」バッハ、「私の命をささげます。子供たちのためにマリヤを返してください。・・・私はこの現実を受け入れながら、生き続けることは無理です。」
バッハの曲は、神からの語り掛けは、高音域から流れるようにくだり、それに対して、バッハは低音部から応答する。神様からの優しく、絶え間ない慰めと励まし。心を閉ざすバッハ。シャコンヌの全曲にみられるのは、バッハの正直で赤裸々な告白。それへの神様の愛溢れる励ましのことば。バッハのこの時の神様とのやり取りを、バイオリンという小さな楽器一本で表現した。それは、バッハのうちで繰り広げられた彼の個人的な体験だったからだろう。このシャコンヌで、私が感じたことは、バッハと神様との執拗にして激しいぶつかり合い、そして現実を神の御意思として受け入れるバッハの覚悟であり、神への信仰告白だった。それは、人間という大きな罪をもつ存在が、神に用いられるためにどうしても通らねばならなかった試練だったのだろう。(『わが子よ、主の訓練を軽んじてはならない。主に叱られて気落ちしてはならない。主はその愛する者を訓練し、受け入れるすべての子に、むちを加えられるのだから。』ヘブル12:5)

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