老兵は黙って消えるのが大切

エッセイ

「老兵は死なず、消え去るのみ」は、アメリカの兵隊歌であるが、ダグラス・マッカーサーが1951年4月、退任演説の際に引用した。なぜ老兵は「消えるのみ」なのか、退職の2文字がちらつく今、考えてみた。
人生を振り変えると、まことに多くの困難を乗り越えてきた。後輩達に助言と励ましを伝えたく、私の歩みを語ったことがある。しかし「あんたの自慢話を聞きたくない」と言われた。確かに聞き方によってはその通り。そう思われるくらいなら、黙って去りたい。
人生において、ゴールよりも、そこまでの過程が重要だったと思う。若い頃に彷徨し、生きる信条や職業、結婚などを模索してきた。その長い過程で、出会った友人、先輩、恩師からの影響は大きかった。
結果より過程が重要であったという意味で、学術論文と似ている。論文の構成は、目的、対象と方法、結果、考察によって成り立つが、この中で最も重要なのは、対象と方法と言われている。どんなに結果と考察が素晴らしくても、投稿先の査読者が注視するのは、対象と方法という過程だ。現在の私自身に至る過程は、私個人のものであり、後輩に語っても伝わらない。黙って去るしかない。

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