アダムがエバをもう一度許す時

エッセイ

人間の歴史を振り返ると、そこには戦争、憎しみ、死、略奪など、あらゆる悪が大河のように流れている。もし、この流れを遡上して、はじめの悪の一滴にたどり着けるとするなら、私はそれはきっと「アダムとイブ」が犯した罪であろうと思う。
アダムとイブが禁断の果実を食べた時、二人の間で、きっと次のような会話があっただろうと思う。
イブ「私はとんでもない悪いことをしてしまったわ。許して。」と泣き叫んでいる。アダムは心からイブを愛しいと思った。そして抱き寄せて、「あなたが悪いのではない。私が決めたことだ」と言いながら、イブを強く抱きしめた。
この時、アダムは心に誓った、「この世に神がいなくてもいい。私は自分でこの女を守り、幸せにしてみせる」。
しかし、これが人類の苦悩の始まりであるとは、二人は知らなかった。
そして、私はこのときのイブの表情がいかなるものであったか、気になる。泣きつつも、彼女には笑みも見られたに違いないと思う。神に忠実なアダムをみていて、イブは神に嫉妬していたのかもしれない。アダムを自分ひとりのものにしたいという独占欲が働き、やっとアダムを自分のものにできたという満足感があったかもしれない。その後、待ち受ける苦難を慮ることもなく。

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