身につけたい 「患者」の作法

エッセイ

長年、多くの患者に接してきて、患者が身につけておくべき作法があるのでと思ってきた。そして私自身が死にかける大病を患って、益々その認識を強くした。厳しい内容になるが、率直な意見を述べておきたい。
「患者」の作法① 自分が死にゆく状態であっても、一人の人間としての果たすべき義務がある。自分を甘やかせてはならない。作法② 残された時が短いとわかったら、自分を主張するより、家族を思いやろう。作法③ 病院に居心地の良さを期待してはならない。自宅より心地よいと退院がいやになる。作法④ 主治医を責めたい時、クレームでなく、依頼しよう。作法⑤ 延命処置を拒否するリビングウイルは、勧められてでなく、自らが作成しよう。作法⑥ 忙しい医師に適切な診断と治療以外のものを期待してはならない。診療単価が低い我が国では、多くの患者を診なければならず、その二つすら危ない。作法⑦ 医療従事者に期待することは医療に限定したほうがよい。人生の問いを若い彼らに投げかけてはならない。作法⑧ 体が病んで心まで萎えてきた時、自分の責任として対処しよう。(朝日新聞 声に掲載)

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