狸の忘年会

エッセイ

子供たちはまことに親を楽しませてくれました。長女の礼子が9歳のころでした。私にこのように問いかけてきました。「お父さんは、狸が人間にかわったところをみたことある?」と。なんとまあ、子供らしい面白いことを聞いてくるなあと受け止めつつ、大きくなったのにまだこんなことを考えているのかと少々心配にもなりました。
そして私は何と答えるか、はたと困りました。見たことないと言ったら、つまらない話になってしまう。娘に考えさせねばならないと思って、とっさに「見たことあるよ」と答えました。
さらに、「実はお父さんはタヌキなんだよ」と言ってしまいました。娘は驚いたか、怖くなったのか、少し後ずさりしました。ちょっと言い過ぎたかなと思い、すぐに、「礼子はタヌキの娘なんだよ」と言ったら、やっと笑ってくれました。
私、「狸は大勢の人間に化けているんだ。今からお父さんは大学の忘年会に出席するけど、狸ばっかり。行ってきます。」

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