不合格通知でよりたくましく

エッセイ

「サクラジマフンカゼズ」、「フグドクアタル」「ダイブツノメニナミダ」。これらは大学受験の不合格通知であるが、見方によっては合格通知より価値がある。
私もかつて東北のある大学から「ミチノクノナオユキフカシ」をいただいた。秋田美人の彼女を追って受験したが、大学にも彼女にもふられてしまった。遥か昔のことながら、桜の季節になると今だにミチノクを懐かしく、切なく思い出す。
しかしこの電文は、青春の未熟さを情感こめてさとしてくれ、当時の私にとって貴重なものとなった。
不合格だった受験生諸君にお伝えしたい。この社会では、四十歳を過ぎてからも挫折したり、不合格と言われることがある。働き盛りになってから世をはかなむことのないように、若いうちにしっかりと免疫力をつけておいてほしい。
その意味で、目標にアタックして拒絶されたショックは、カウンターパンチのように強烈なほどよかったのだ。
若いほど心の傷は早く癒されるのであり、また一度崩れたものが快復する貴重な経験になるのだから。
(朝日新聞に掲載)

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