美しい5月に

エッセイ

独身の若い皆様へ。心地よい5月、聞いてほしい曲があります。詩人ハイネの詩に、シューマンがつけた「美しい五月に」という曲です。歌詞はこうです。
素晴らしく 美しい五月に
あらゆるつぼみが開き
僕の心の中にも愛が花咲いた

素晴らしく美しい五月に
あらゆる鳥が歌い出し
僕は彼女に打ち明けた
僕の憧れ 僕の望みを
私はこの年になり、今までを振り返って思います。人生に真に価値ある瞬間があるとしたら、いつであったかと。それは、あの時しかあ
りえないと思うのです。卒業式でも職場で昇進した時でもありません。金も地位もなく、肩書もない時、心よせる彼女に自分の憧れ、自分の望みを伝えた時でした。胸が高鳴り、声は震えていたと思います。曲も、不安や戸惑いの気持ちを表現しています。
古今東西、民族をこえてプロポーズとはこういうものなのでしょう。勇気をもって「あの人」に伝えましょう、あなたの憧れとあなたの望みを。諸君の豊かな将来を願いつつ。                        2016.5.17 朝日新聞「声」に掲載

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