生き様が決める認知症周辺症状

エッセイ

認知症患者が、「うるさい、黙れ」と叫んだり、「物がなくなった、あの人が盗んだ」と言って、介護者を困らせることがある。脳神経の脱落により、このような周辺症状が出現してくると思ってきた。
しかしそれだけでなく、それまでの生活習慣や生き方の総和として、人生の終末期に自分そのものが現されるのではと思う。
たとえば50歳の会社社長がいて、責任感が強く、負けず嫌いの人柄だと評価された。しかし家族や友人からみると、強欲で自己中心的、怒りやすい性格であった。こういう人が老いて認知症になると、思い通りにならない状況に置かれると激怒するのではないか。
もし若い時から、家族や友人から叱責や注意をしっかり受けてきたなら、社長でもオカシイことはオカシイと指摘され修正を求められてきたなら、他の人への配慮が時々欠けていると指摘をうけてきたなら、そしてそういう指摘を受け入れるのが難しいと苦悩したのなら、老いて認知症を発症しても、周辺症状の現れ方が異なるのでないだろうか。
「生きてきたように死んでいく」とある介護施設職員は言っていたが、高齢になり認知症になる、ならないにかかわらず、老いた方の人となりは、若い時に豊かな人間関係を築いてきたか、そういう家族や友人に恵まれていたかを示すのではないだろうか。

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