マジックで見た幸せのヒケツ

エッセイ

先日、鳥羽のあるホテルで、マジックショ-を見た。次々に繰り広げられた不思議に、ただただ驚いて歓声をあげた。
当日のフィナーレは、マジックの神様の妙技だった。健康上の理由から、これが最期の来日と聞いた。私達は芸術を感じ、プロの仲間には涙を流している者もいた。
オープニングで、司会が「どうしてそうなるのかと考えないで、単純に感動してほしい」と勧めていた。この言葉から、世の中で幸せになる秘訣について考えさせられた。
幸せを得たい人と、幸せを与えたい人がいた時、両者は相補的なペアになっている。
幸せを与えたい人は、マジシャンのように、技の研鑽をしている。そして演技を喜んでくれる人がいる事が、力になる。
一方、幸せを得たい人は、だまされているとは思わず、素直に喜んでいる。そして自分のために一生懸命になってくれている事に感謝している。
つかの間の人生なら、真実か否か検証する時間はとても少ない。ある人から幸せを受けたら、その方と自分のために歓声をあげたい。たとえ、それがまやかしであっても。
また幸せを与える人にもなりたい。決してトリックは明かさないようにして。
(朝日新聞に掲載)

タイトルとURLをコピーしました