香りの効果で歴史生き生き

エッセイ

次のようなクイズをつくってみた。キリストの「最期の晩餐」のとき、部屋中にある香りが充満していた。それは何の香りか。
ヒント①キリストから発せられていた。ヒント②当時の埋葬につかわれた。
正解は、ナルドの香油。当時としては非常に高価であった。晩餐の直前、イエスはマリアから埋葬の準備のために、壷に入ったこの香油を全部、頭からぬられた。
どのような臭いか、アロマセラピーの店に注文して、取り寄せてみた。濃厚な原油は、はじめ土のような古い臭いだった。しかし、それが時間とともに稀釈され、半日ほどで甘く、かぐわしく、高貴な香りに変貌した。
おそらく、晩餐の席で「うらぎり者がいる」と言われてイエスに詰め寄った時、弟子達が嗅いだのは、かなりまだ濃厚な臭いであっただろう。その後、時間が経過するにつれ、稀釈されていった。イエスが鞭打ちの刑を受けた時、ゴルゴダの丘に向かう時、そばにいた人たちは、「このお方はすでに埋葬の備えができている」と直感しただろう。そして残酷な刑とはかけ離れた清らかな香りをイエスから受けたにちがいない。
歴史に臭いをつけてふりかえると、より生き生きとなって理解が深まると思った。

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