乏しさの中で 生きる力養う

エッセイ

15歳の少年による親殺しがあった。「オヤジなんて殺したいほど嫌いだ。母さんは忙し過ぎて死にたいと言っている。辛くて見ていられない」。このように行き詰まっている高校生に対して、父親として何ができるか考えてみた。
いきなり荒療治ではあるが、息子を連れてどこかのジャングルでサバイバル生活をしたい。水や食べ物は充分になく、きっと二人して困り果てるだろう。しかし、なんとか乏しい知恵を出し合って生き抜くことを教えてあげたい。
飢餓状態になったら、蛇やトカゲも御馳走に見えてくる。そしてきっと息子はわかるだろう。今まで忌み嫌っていた蛇のようなグロテスクなものが、実は生きる糧になることを。そして嫌いな父親でも、意外に役立つことがあることを。
若者達は、高い記憶容量や情報処理能を志向するように訓練される。しかし、あえて乏しい知識や弱々しい体力で何とかやり繰りする能力も同様に習得することが必要だと思う。
弱肉強食のジャングル社会に向かいながら、行き詰まっている若者達におすすめしたい。つつましく、けなげに生きることを。            (朝日新聞2005/7/16)

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