リビングウィル 親の甘さが害

エッセイ

治る見込みなく、意識ないままでも人工呼吸器で延命したい。このように言った人に、今まで出会ったことがない。すべての方々が、「家族に迷惑はかけたくない」、「そこまでして生きる必要はない」と率直に話してくれた。
この希望をかなえるには、リビングウイルといって、前もって自分が希望する末期での処遇を文書に残しておくのがよい。
しかしこのリビングウイルは、日本では欧米のように普及していない。私は終末期にある患者さん達の多くが、なぜ家族に依存し、真剣に備えようととしないのか不思議に思ってきた。
私達は死を忌み嫌い、日頃の話題に持ち出すのは縁起が悪いと思う。私はさらに、日本独特の親子関係が原因していると思う。
親は一人で方針を決めたら、親子関係が薄れるのではと恐れる。子供が自分の考え通りにしてくれないというリスクを覚悟で、親が自分にとって最も大切な最期の決断を、子供たちに委ねる。そういう仕方で、子供たちの中に、自分がまだ生きてほしいと願うのではないだろうか。
日本では、親が子離れしないと、リビングウイルの普及は難しい。
(2007/2/1)

タイトルとURLをコピーしました