2023-01

エッセイ

患者の意思を最上位におく議論を

ALSに関係する嘱託殺人事件は、2004年に横浜でもあった(1)。ALSだった40歳の長男に懇願され、母親が人工呼吸器を止めた。嘱託殺人罪で執行猶予付きの判決をうけたが、母親は悩み、「長男の所に行きたい」と夫に懇願した。致し方ないと考え、夫...
エッセイ

ぶっ壊せガンジガラメ 

産業医としてある高等学校を訪れ、50年ぶりに教室に足を踏み入れて驚いた。「同じ椅子、同じ机・・・・昔と変わっていないなあ」と思った。 昔は授業中、じっと座っていなさいといわれ、それが教育なのかと信じた。しかし個人の特性が尊重され、テーラーメ...
エッセイ

雪よりも白く

静岡生まれ、三重在住の私が雪を見るのは年に1,2度しかない。ひと晩で一変する雪景色は滅多に見れないが、そのたびに私はダビデの祈りを思い起こす。 「ヒソプをもって私の罪を除いて清めてください。そうすれば、私は清くなりましょう。私を洗ってくださ...
エッセイ

いつまで生きるのか?

高齢の方々と話していて、しばしば次のように問われる。「はやくお迎えがきてほしい。いつまで生きていなければいけないのか。」 どのように返答すべきか、戸惑いつつ、次のように応えるのが精一杯だ。 「寿命は神様から与えられたものです。必ずその時は来...
エッセイ

宗教的理解ほしい医療現場

アカデミー賞を獲得した映画「ドライブマイカー」を観た。そして、題材となったチェーホフの「ワーニャ伯父さん」を読んでみた。主人公の「(生きるって)なんて辛いんだろう」の言葉に考えさせられた。 これへの応答には数々あろうが、一例を私達はこの映画...
エッセイ

伊勢物語のメッセージ

三重に転居して35年。やっと伊勢物語を読むことができた。 これは平安時代にできた短編歌物語集で、多くが、「むかし、男ありけり」の冒頭句を持つ。 読んで最も強く感じたことは、人の心から発する言葉の重みだった。 私はあなたのことを大切に思ってい...
エッセイ

般若の悲しみ

コロナ禍の前、津市お城公園で、久し振りに薪能を見た。暗闇に舞台が明るく浮かびあがり、まさに幽玄の世界を見た一夜であった。 曲目は源氏物語に題材を得た「葵上」。光源氏の正妻である葵上が、六条御息所の怨霊にとりつかれるという内容だ。 鬼女となっ...
エッセイ

人生をエレガントに生きる

エレガントとは、いろいろな意味があるが、ここでは「単なる装いでなく、根拠のある気品をもつ」という意味です。ALSや、事故、ガン、天災・・など、この世界には様々な辛い体験がありますが、その中でなおエレガントに過ごせるなら、それこそ「幸せ!」に...
エッセイ

夫婦共謀・・アダムとエバ

夫婦とは、夫はアクセル、女房はブレーキであり、このバランスのもと、なんとか社会で成り立っていくのだろうと思う。 しかし両方がアクセルになった時、異常な力を発揮する。最近、夫婦が絡む報道を見てきて、共謀の罪について考えさせられた。 この最古の...
エッセイ

戦争の悲惨さを保存できない不幸

憲法改正の論議を見て思った。戦争体験の記録、特に最も過酷な部分は後世に伝承されず、戦争抑止に役立たないのではと。 目の前で焼夷弾で焼かれた親兄弟、死体の山の腐敗臭、死骸の目や口からわき出るウジ虫・・・・。 これら体験者が記憶する悲しみの極み...
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